maclalalaweblog

2007年 6月 3日

Dの余韻

steve_jobs_bill_gates_joi_ito

まだDの余韻の中にいる。

Asa Mathat の写真はそれほど衝撃的だった。

予期せぬ Jobs の明るい笑顔や表情に、これまで知らなかった彼の一面を垣間みたような気がした。

一枚の写真の威力だ。

ニューヨークタイムズ(John Markoff)の記事にも、Jobs と Gates のすばらしい写真が添えられている。クレジットは「Joichi Ito」、なんと伊藤穰一氏だ。

彼自身がブログで語っている。

Joi Ito’s Web:”Steve Jobs and Bill Gates at D“:5月31日

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Walter Mossberg と Kara Swisher が Steve Jobs と Bill Gates のインタビューをした。そしてニューヨークタイムズの John Markoff が記事にした。私が撮った写真を使ってる。やった!

Walter Mossberg and Kara Swisher interview Steve Jobs and Bill Gates. John Markoff wrote a New York Times article about this interview. They used my photo. w00t!

発言で覚えていることをいくつか。Flickr にも載せた。

A few notes of my own that I posted on Flickr:

Bill:「Steve の趣味の良さには一目置いている。」

Bill: “I’d give a lot for Steve’s taste.”

Steve:「Bill との方が、Wozniak と自分の場合より、組んでうまくいった。」

Steve: “Bill was much better at partnering than Steve Wozniak and I were.”

Steve:(秘密を守ったことについて)「我々が結婚して10年以上になる。」[正確には「我々の結婚を秘密にしてもう10年ほどになる。」]

We’ve kept secret that: Steve: “We’ve been married for 10 years.” [It was actually: “We’ve kept our marriage secret for over a decade now.”]

Bill:「私は偽 Jobs ではない。」

Bill: “I’m not the Fake Steve.”

記憶をたどって書いたので、正確な表現は少し違うかもしれない。

Quotes from memory. Exact text may be wrong.

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日本とアメリカを股にかけ自由に活動する伊藤穰一氏は、同国人に向けてのみ声の大きいひとと異なり異色だと思う。

ブログを始めた頃から、とても気になる存在だった。

日本生まれ、アメリカ育ちだとしても、Dのような催しに出席し、自由に動き回り、多くのひとと交わる、それは大したことに思える。

引っ込み思案というか、引きこもり症候群の筆者からみると実に羨ましい存在だ。

そんな彼が、Dの後の率直な気持ちを綴っているのを読むと、これまた親近感を覚えてしまう。

Joi Ito’s Web:”Later D and thanks for all the bits“:5月31日

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D5 は楽しかった。ほとんど「昔に戻った」気さえした。起業家、ベンチャーキャピタリスト、ヘッドハンター、企業のデベロッパ、大会社の CEO、いろんなみんなと話をした。ただ、カクテルパーティのおしゃべりはまだしんどい。だから早々に切り上げた。基本的に自分はシャイだと思う。「それで、いま何やってるの?」と尋ねられて、きちんと答えられないことでさらに気まずい思いをするのかもしれない。

D5 was fun. I felt almost “back in the swing of things” talking to all of the entrepreneurs, VCs, headhunters, corp dev guys, and BigCo CEOs. I still have a really hard time feeling comfortable schmoozing at cocktail parties and left most of them early. I think I’m fundamentally shy. My lack of focus and the subsequent difficulty in answering the question, “So! What do YOU do?” probably makes it worse.

有名人たちの写真を撮る方がまだいい。それでもみんなに近づいて、挨拶なしに「ハーイ」だけで済ますのはまだ苦手だ。それをなんとか乗り越えなきゃいけないのだろうけれど・・・

I’m getting better at taking photos of celebrities, but I still have a hard time going up and saying “hi!” to people without an introduction. I should probably learn to get over that.

以下、写真を撮るようになった経緯に触れたあと・・・

たくさんのことを知り、会えてよかったと思うひとにたくさん会えた。こちらカリフォルニアに住んでいたら、仕事がもっとできたのではないかと思う。その一方、菜園や堆肥のことを考えると早く帰りたくなる。自分のアイデンティティーが太平洋の両側にまたがるこんなライフスタイルは、私のような ADD[注:attention-deficit disorder、注意力欠乏症?]の精神状態にはちょうどいいのかもしれない。もっとも長期間ということになると、それでいいのかどうか分からないけれど・・・

I learned a lot and met a bunch of people who I’m glad to have met. It makes me realize that I’d probably get a lot more work done if I live out here in California. On the other hand, I miss my compost and my garden and am anxious to get back home. I guess this identity stretching lifestyle is probably the right balance for my spiritual ADD, but I’m not sure it’s really the best configuration long term…

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ウォールストリートジャーナル主催なのでDの司会は Walt Mossberg だった。Jobs が応じる司会者は Mossberg か Steven Levy ぐらいだろう。その Steven Levy が YouTube セッションで一般席から質問をするところを伊藤穰一氏が撮っている。

Flickr に掲載された氏の写真をみると、写されたひとの心が開いていることが分かる。彼が名写真家だと知ってうれしかった。

いろんなひとがDについて書いている。それほどインパクトの大きい催しだったということだろう。しばらくはDの感想記事を読みあさることになりそうだ。

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2007年 5月 31日

終始和やか、世紀の対決

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[Jobs and Gates at D]

「D:デジタルのすべて」会議で、Bill Gates と Steve Jobs の歴史的な顔合わせが実現した。

激しい対決になるのではないかという予想に反して、二人は終始和やかだった。

二人の大人の対応に、それを報じるニューヨークタイムズ(John Markoff)の記事も、これまた優等生的なものとなった。

New York Times:”A Trip Down Memory Lane and Over the Horizon” by John Markoff:5月31日

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みんなが期待したマイクロソフトの Bill Gates とアップルの Steven P. Jobs と世紀の対決は、水曜日(5月31日)の夜に行われた。古い時代の戦いと同盟関係、そしてデジタル文化と技術の未来について二人は思いを馳せた。

CARLSBAD, Calif., May 30 — In a highly anticipated encounter, Bill Gates of Microsoft and Steven P. Jobs of Apple took the stage Wednesday evening to relive old battles and alliances and speculate about the future of digital culture and technology.

二人は30年もの間ライバル同士で、公の場に二人一緒に姿を見せたことは滅多になかった。ときに協力関係を結ぶことはあっても、激しいライバル同士と見なされていた。

Rivals for three decades, the two executives have rarely appeared in public together and have generally been viewed as bitter rivals, despite occasional partnerships.

ウォールストリートジャーナル主催の会議「D:デジタルのすべて」には、600 人近い技術関係のトップが詰めかけた。二人はロックスターやハリウッドの映画スター並みの注目を浴びた。

In front of about 600 technology executives at the D: All Things Digital conference, which was sponsored by The Wall Street Journal, the two executives attracted the attention usually reserved for rock singers and Hollywood stars.

ただし、激しい火花散る戦いや対決を期待して出席したひとたちには期待外れだった。もっとも、穏やかなトーンに終始したからといって、その催しが損なわれたわけではない。コンピュータ業界の過去、現在におよぶ討議が終わったとき、ふたりはスタンディングオベーションで迎えられたのだ。

However, attendees who came hoping for fireworks or a confrontation were disappointed. The mild tone to the session did not take anything away from the event and after discussing the past and present of the computing industry, the two were greeted with a standing ovation.

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イベントが終わったあと、コンピュータ業界に長いベテランたちの多くが、これまで出席したどの催しより今回二人が一緒に登場したことは記念すべきものだったと述べた。

After the event was over a number of the attendees who are veterans of decades in the computer industry said the joint appearance was the most memorable moment of any of the many conferences they had attended.

Gates 氏と Jobs 氏は、1975 年・1976 年に始まったパーソナルコンピュータの時代を共にパイオニアとして過ごした。この夜、二人は当時の思い出を語り合った。

Mr. Gates and Mr. Jobs largely pioneered the personal computer industry beginning in 1975 and 1976 and they spent part of the evening sharing memories of those days.

「今日のコンピュータは1〜2ギガバイトのメモリーを載せて出荷される。もう誰も 128 キロバイトの時代のことを覚えていない」と Jobs 氏は語った。

Today “we ship these computers with one or two gigabytes and nobody remembers 128 kilobytes,” Mr. Jobs said.

1977 年にコンピュータ時代が始まった当時、アップルとマイクロソフトはお互いにビジネスパートナーだった。当時 Gates 氏は、Apple II コンピュータのために BASIC プログラミング言語を提供した。後に Gates 氏は、マッキントッシュのためにソフトウェアを書くという賭けに出た。それはマッキントッシュが登場する 1984 年より2年ほど前のことだった。

Apple and Microsoft were business partners at the start of the computer era beginning in 1977 when Mr. Gates supplied a copy of the BASIC programming language for the Apple II computer. Later, Mr. Gates made an early bet on writing software for the Macintosh, two years before the computer was introduced in 1984.

両氏とも、彼らがスタートさせたパーソナルコンピュータ時代が近く終わりを迎えることになるかもしれないなどとは認めようとしなかった。

Neither was willing to acknowledge the possibility that the personal computer era they helped create would end any time soon.

「PC は非常にしぶといことが証明されている」と Jobs 氏はいう。

“The PC has proven to be very resilient,” Mr. Jobs said.

また二人は、「PC 後のデバイス」(Post PC devices)とも呼ばれるハンドヘルドの通信機器が、今後爆発的に伸びることを信じていると述べた。

At the same time they called themselves believers in the explosion of hand-held communications devices, also known as “Post PC devices.”

Gates 氏は、この業界は人の動きが速すぎることに時たまフラストレーションを感じると述べた。「ひとがいたかと思うといなくなってしまうのは残念だ。もう少し長くいていてくれたら、もっとつながりが出来るのに。」

Mr. Gates said he was sometimes frustrated by the fact that the players in the industry changed so quickly. “I miss it when people come and go. It’s nice when people stick around and it gives us some context,” he said.

どちらも相手に対して激しいことばを交そうとはしなかった。最後に Jobs 氏はビートルズの曲を引用して自分の気持ちを締めくくった。「〈キミとボクはお互いに長い思い出がある。これから続く長い道よりもっと長い思い出が・・・〉 これが二人についての気持ちだ」と。

Neither man was willing to say harsh things about the other and Mr. Jobs summed up his feelings by quoting from a Beatles song: “‘You and I have memories longer than the road that stretches out ahead,’ that’s clearly true here,” he said.

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この顔合わせは、例によって Engadget のライブでリアルタイムでフォローした。Engadget の早さと正確さは群を抜いている。

Engadget:”Steve Jobs and Bill Gates: Historic discussion live from D 2007” by Ryan Block:5月30日

予期に反して、二人ともなかなか行儀がいい。司会が水を向けても、挑発にのることもない。

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そのうち、Ryan Block のこんな感想も混じってくる。

みんな!この二人はお互いに尊敬し合っているようだ。間違いない。厳粛な畏敬の念、深い尊敬、それが伝わってくるのだ!

[People, we’re telling you, these guys really respect each other. There’s no doubt about it. There’s a certain, sombre reverence, and profound respect. It just comes through.]

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Engadget を見終わったあとは、主催者のサイトで目を通す。掲載された写真は、これまでに見たことのないような雰囲気の Jobs を映し出している。一緒の Gates も実に伸びやかな表情だ。

AllThingsD:”Bill Gates and Steve Jobs” by John Paczkowski:5月30日

下世話な対決の期待とは裏腹に、二人には長い歴史を好敵手として共にしてきた者だけがもつ信頼と畏敬の念があるようだ。

この感じは、掲載されたビデオを見るに至って確信となる。

AllThingsD:”VIDEO: Steve Jobs and Bill Gates Prologue” by John Paczkowski:5月30日

どうか直接このビデオをご覧になって、ご自分の目で確かめていただきたい。全部を見るのが長過ぎる場合には、ハイライトの8分だけでもご覧いただきたい。

AllThingsD:”VIDEO: Steve Jobs and Bill Gates Highlight Ree” by John Paczkowski:5月30日

これは、実に稀な歴史的顔合わせだと思う。

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2005年 11月 26日

プレゼン名人 Jobs vs. Gates

Steve Jobs と Bill Gates のプレゼンテーションを比較した記事がおもしろい。“Gates, Jobs, & the Zen aesthetic” by Garr Reynolds

片や名人の域に達したプレゼン名人、もう一方はプレゼンツール PowerPoint を生んだ会社の総帥だ。

プレゼンテーションの内容に注意を集中させるため、時には「カラのスライド」(empty slides)を効果的に使うことが重要だという指摘には頷(うなず)かされる。

Jobs と Gates の典型的な例を並べてみるとそれがよく分かる。

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大事な話をするとき、Jobs は自分に注意を集中させるために、背景のスライドは消してカラッポにする。

… Steve Jobs, allows the screen to fade completely empty at appropriate, short moments while he tells his story. … A blank screen from time to time also makes images stronger when they do appear.

… The thought of allowing the screen to become completely empty is scaring. Now all eyes are on you.

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一方 Gates の場合、スライドが賑やかすぎて後ろに注意がいき、話の印象が散漫になってしまう。しかも、スライドの出来が悪いため尚更だ。

Gates here explaining the Live strategy. A lot of images and a lot of text. … Good graphic design guides the viewer and has a clear hierarchy or order so that she knows where to look first, second, and so on.

こんな感じで、具体的な例を挙げながら Jobs と Gates のプレゼンテーションを比較していくので、なかなか説得力がある。

スライドのデザインが重要なことを分からせるため、つぎのような例を挙げる。

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いわゆる bullet points の多用は、論点を分かりにくくし、ゴチャゴチャさせるだけだ。

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禅の美意識の話や、「簡素」、「見え隠れ」、「八分で押さえる」といったことばが出てくるところはご愛嬌だが、アップルにいたことがあり、関西外大に勤務する、ユニークな経歴の持ち主のようだ。

また、「自然体」という観点から、Gates がよくやる胸の前で指を合わせるジェスチャは居心地の悪さを感じさせるのでよくないとか、ポケットに手を突っ込んで話すのはインフォーマルにすぎてアメリカですら通用しないなど、なかなか教えられる点が多い。

One unfortunate habit he [Mr. Gates] has is constantly bringing his finger tips together high across his chest while speaking. Often this leads to his hands being locked together somewhere across his chest. This gesture makes him seem uncomfortable and is a gesture reminiscent of The Simpsons’ Mr. Burns. By contrast, Steve Jobs has a more open style and at least seems comfortable and natural with his gestures.

Fundamental presentation rule: Do not stick your hands in your pockets. Informality is fine, but this is inappropriate even in the USA (and especially in cultures outside the U.S.).

良いプレゼンテーションに関心を持つひとにとって一読に値する記事だ。

参考:

“Gates, Jobs, & the Zen aesthetic” by Garr Reynolds
“Bill Gates and visual complexity” by Garr Reynolds
“The Zen of Jobs: presentation skills” by Scott McNulty (TUAW)

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