maclalalaweblog

2007年 5月 23日

「1984」を紹介する Steve Jobs

映画「Blade Runner」を撮ったばかりの Ridley Scott が制作、たった一度しか放映されなかったアップルの伝説的コマーシャル「1984」の紹介ビデオが見つかった。それも Steve Jobs 自身が紹介しているものだ。

TUAW:”Found Footage: Steve introduces the ‘1984’ ad” by Dave Caolo:5月22日

YouTube Video: “1983 Apple Keynote” | Added:  March 04, 2007 | From:  misha1035

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彼(か)の有名なるアップルのコマーシャル「1984」を紹介するすばらしいビデオだ。1984 年のスーパーボウルで放映される一週間前のもので、マッキントッシュチームと思われるにぎやかな聴衆に向けたものだ。彼らはとても気に入ったようだ。

Here’s a great video of Steve introducing the famous “1984” ad to a boisterous crowd (we’re guessing the Macintosh team) a week before it aired during the 1984 Super Bowl. I’d say they liked it.

もし Steve の得意なことをひとつ挙げるとすれば、それは説得力のあるスピーチをすることだろう。

If Steve’s good at one thing, it’s making a persuasive speech.

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この記事には読者の書き込み(Comment #3 by cuda440)があって、株主総会のときだったという。

追記:株主総会だった

読者の cuda440 が知らせてくれた。「これは 1984 年1月の株主総会のときのものだ。クパチーノのデアンザカレッジ、フリントセンターだ。私自身その場にいたので知っている。同僚のアップル従業員のほとんどが出席した。明らかに MacWorld より前だ。主な製品発表は株主総会で行ったものだ。」

Update: Reader cuda440 says, “That was at the January 1984 annual shareholder’s meeting, held at the Flint Center, De Anza College, Cupertino. I know because I was there, as were nearly all of my fellow Apple employees. Obviously this was before MacWorld, and the shareholder’s meeting was where major product announcements were made.”

スゴい! cuda440、教えてくれてありがとう。

Cool! Thanks for the info, cuda440!

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さらには、別の書き込み(Comment #8 by Z)もあって、いやハワイでのセールス会議だったという。[注:Wikipedia の解説と合致する]

追記2:いやハワイのセールス会議だった

これは本当は株主総会の数か月前、ホノルルで開かれたアップルセールス会議(Apple Sales Meeting)で撮影されたものだ。「先頭を切って」(Leading the Way)が会議のテーマで、導入部の曲はこのイベントために特別に作曲されたものだ。この会議に参加したのはアップルのセールス部隊、アップルの幹部、新製品開発に関係した従業員、それに広告エージェンシーの Chiat/Day チームだった。

Acutally, this was shot at the Apple Sales Meeting held in Honolulu in the Fall of 1983, several months prior to the shareholder’s meeting. The theme of the sales meeting was “Leading the Way” and the lead-in music was specially written for the event. Attending this meeting were Apple’s sales force, Apple management, employees who were involved with new product introductions, and the Chiat/Day agency team.

セールス部隊の大部分が、アップルの流通チャンネルのディーラーたちだった。IBM がチャンネルを排除したため、たくさんのディーラーがアップルに戻ってきたと Steve が強調したとき、聴衆が大きな反応を示すのが聞き取れる。株主総会ならこんな反応はない。

Apple’s sales force was predominantly dealer channel oriented; you can hear how strongly the audience reacts when Steve highlights how dealers are increasing turning back to Apple as IBM is alienating the channel. Clearly not the type of reaction you’d hear at a shareholder’s meeting.

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何の会議だったにせよ、IBM がなぜビッグブラザーなのか、Jobs の説明を聞くと納得できる。

二十歳代の Steve Jobs は、既にこの時点でプレゼンテーションの天才だった。

それにしてもなんと若々しく、自信に満ち溢れていることか・・・

マックファンにとって必見のビデオだ。

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2007年 4月 22日

とびきりのプレゼン

don_mcmillan

プレゼンテーションに関心がある方に、とびきりのプレゼン二つをご紹介。

いずれもプレゼンの達人 Garr Reynolds 氏のブログで紹介されているものだ。

Presentation Zen:”PowerPoint: sometimes you have to laugh to keep from crying” by Garr Reynolds:4月15日

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こんな使い方は避けましょう:Don McMillan

Video by Don McMillan:”Life after Death by PowerPoint”[Presentation Zen:”PowerPoint: sometimes you have to laugh to keep from crying” by Garr Reynolds の最初のビデオ]

まず最初のビデオは、Don McMillan によるプレゼンテーション。彼はスタンフォード大 Electrical Engineering の修士号をもつ多彩な職歴のエンジニアだが、パワーポイントの特徴を駆使したプレゼンがめちゃおもしろい。

「Life after Death by PowerPoint」と題するビデオで、Don McMillan はパワーポイントの間違った使用法を列挙する。

1)話す内容をなんでもかんでもスライドに書き込むんじゃない

2)誤記、脱字がないように、ちゃんとスペルチェックをしろよ!

3)ブレットポイントを使い過ぎると要点が分からなくなる

4)変な色使いは、見るだけで気分が悪くなる

5)スライドの枚数が多いほど、話の内容が薄くなる

6)一枚のスライドに盛り込む内容が増えるほど、その効用が失われる

7)アニメーションの多用は混乱させるだけ

8)フォントは注意して選ばないと、性格まで見抜かれる

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パワーポイントの正しい使い方の反面教師だ。

パワーポイントを駆使したコメディタッチのプレゼンは秀逸。

こんな特技を持つエンジニアがいるなんてすごい。アメリカのエンジニアは裾野が広い。

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少ないことばでも伝わるか:Doug Zongkers

もうひとつは、なるべく話すことばを少なくして、あとはパワーポイントの技術を駆使することによって、いいプレゼンが出来るかどうかという実験。

その名も「Chicken, chicken, chicken」

Video by Doug Zongkers:”Chicken chicken chicken”[YouTube Video:”Chicken chicken chicken“:2月22日]

メッセージを伝えるとき、ことばで表現される部分はたったの7%だといわれる。それでは、従来のパワーポイントのテクニックと、たった一語に絞ったことばだけで、聴衆との連帯感を築き、かつ、意味のあるプレゼンをすることが可能だろうか。この Doug Zongkers のプレゼンを見て、ご自分で判断していただきたい。

It is said that only about 7% of our messages are expressed verbally. Is it possible, then, to make a connection with an audience and make meaning using traditional death-by-PowerPoint techniques and limiting your vocabulary to one word? Watch this presentation below by Doug Zongkers and find out.

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百聞は一見に如かずとはまさにこのことだ!

Steve Jobs のプレゼンのすばらしい分析をしたCarl Howe もお薦めだ。

プレゼンのテクニックを磨きたいと考えているあなたに必見のビデオだ。

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参考:

・Presentation Zen:”PowerPoint: sometimes you have to laugh to keep from crying” by Garr Reynolds:4月15日
・Blackfriars’ Marketing:”The new rules of presentations” by Carl Howe:4月17日
・Technically Funn:”Corporate Comedy by Corporate Comedian Don McMillan
・YouTube Video:”Chicken chicken chicken“:2月22日

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2007年 2月 24日

「ゲーテ」プレゼンテーション特集号

Filed under: その他,プレゼンテーション,本・雑誌 — shiro @ 12:42

Rdf

幻冬社の月刊誌「ゲーテ」今月号に、当ブログのエントリー「Steve Jobs はなぜ説得力があるのか」(1月14日)が引用紹介された。

「ゲーテ」編集者森田氏の目にとまったものだ。

当ブログの読者に錚々たる雑誌編集者がおられたのは驚きであり、かつ感激であった。

Apr

本日発売された「ゲーテ」一周年記念号はプレゼンテーションの特集号だ。プレゼンテーションに関心のある方には参考になることが多いのではないかと思われる。

素晴らしい文章を書かれた Carl Howe 氏と、拙稿に目をとめてくださった森田氏のご縁に心から感謝したい。

<前 |プレゼンテーション| 

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2007年 2月 20日

ことばか、それともメッセージか

Filed under: その他,ひと,プレゼンテーション,映像 — shiro @ 20:31

Jobsmwsf

プレゼンテーションという意味では、Steve Jobs と Bill Gates の二人は格好の題材だ。

少し前になるが、二人のキーノートを科学的に比較分析した試みがある。

Seattle PI:”Bill Gates and Steve Jobs: Keynote text analysis” by Todd Bishop:1月14日

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科学的なテキスト分析

アップルの CEO Steve Jobs とマイクロソフトの会長 Bill Gates の二人は両方とも、先週すごいキーノート演説を行った。それを比べてみるとどうだったろうか。ある読者にヒントを得て、二人のスピーチのテキストを「タグクラウド発生器」(tag-cloud generator)を通してみた。これは何度も使われたことばに着目して、使われた頻度に応じていろいろなサイズで示すソフトだ。

Apple CEO Steve Jobs and Microsoft Chairman Bill Gates both gave big keynote addresses last week. So how did their messages compare? At the suggestion of a reader, we ran the text of both speeches through the tag-cloud generator, a program that displays the most commonly used words in varying sizes, depending on how often they’re spoken…

またお楽しみとして、UsingEnglish.com の言語評価ツール(language-assessment tools)を使って同じテキストを分析してみた。各数字の前の用語名をクリックするとその定義が分かる。一般的には、数字が低いほど理解しやすいということを意味する。その尺度で測ると、ひとりの役員[注:Steve Jobs]の方がもうひとり[注:Bill Gates]より遥かに優れていることが分かる。

And just for fun, we also analyzed the text with the language-assessment tools at UsingEnglish.com. Click on the names of those ratios below for definitions. Lower scores generally mean that the language is easier to understand. By those measures, one executive did noticeably better than the others.

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分析結果

我々が得た結果はつぎのとおり・・・

Read on to see what we found:

Steve Jobs2007 Macworld Conference and Expo

一文中の単語数:10.5

語彙頻度:16.5%

難語数:2.9%

読みやすさ指数:5.5

Avg. Words/Sentence: 10.5

Lexical Density: 16.5%

Hard Words: 2.9%

Gunning Fog Index: 5.5

Jobscloud

Bill Gates2007 International Consumer Electronics Show

Gatesces

一文中の単語数:21.6

語彙頻度:21.0%

難語数:5.11%

読みやすさ指数:10.7

Avg. Words/Sentence: 21.6

Lexical Density: 21.0%

Hard Words: 5.11%

Gunning Fog Index: 10.7

Gatescloud

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なかなかおもしろい分析に見えるが、これに対しては、本当のプレゼンテーションとは何かという観点から批判がある。

真に偉大なプレゼンテーション(スピーチ)には、ことばだけでなくメッセージが込められていなければならないというのだ。

Presentation Zen:”Words matter, but the message is King” by Garr Reynolds:1月16日

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Seattle PI の分析

世界中の偉大なことばを集めても、聴衆に訴えるものがなく、彼らに対して有意義なものでなければ、それは意味がないのだと我々は知っている。では、ことばそのもの、文章自体はどうだろうか。どれだけ「むずかしい」ことばを使ったか、センテンスの長さはどうだったか、そんなことは重要だろうか。もちろんことばは重要だ。しかし[通常の場合]もっと重要なのは、メッセージであり、組み立て方であり、話し方であり、内容であり、聴衆との連帯なのだ。ところで、Seattle PI がおもしろい記事を載せている。マックワールドの Steve Jobs と CES の Bill Gates(と Michael Dell)のキーノートを、その演説原稿を使って分析したものだ。

We know that the greatest assembly of words in the world does not matter much if it does not register with the audience, if it is not meaningful to them. But what of the words and the sentences themselves? Does it matter how many “difficult” words you use, how long your sentences are, and so on? Words matter of course, but it is the message, the structure, the delivery, the story, the connection, etc. that matter more (usually). Still, Seattle PI has an interesting post comparing the recent keynotes by Steve Jobs at Macworld and Bill Gates (and Michael Dell) at CES using an analysis of their respective keynote transcripts.

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単純で分かりやすいのがいいことか

とくに驚くような結果ではないが、はっきりいってあまり意味があるとは思えない。結果は確かにおもしろい。(なんと、Gates は “Windows” とか “Vista” と何度もいい、Jobs は “iPhone” や “Phone” と何度もいったそうだ・・・。それがキーノートのテーマだったのだから驚くには当たらない。)1文当たりの単語数、語彙頻度(lexical density)、3音節以上の単語の数などを見ると、Steve Jobs の方がより単純な話し方をしているように見える。ということは、比較的単純なことばを使っているせいで Jobs のプレゼンテーションがおもしろく、記憶に残り、楽しいということを意味するのだろうか。単純で、分かりやすいことばと、聴衆に訴える力との間には相関関係があるのだろうか。・・・

The results are not particularly surprising, though frankly they are a bit meaningless. It’s fun to look at the results (man, Gates sure did say “Windows” and “Vista” a lot, and Jobs sure said “iPhone” and “Phone” often…hardly surprising since that was the focus of the keynote). If you look at the average words per sentence, lexical density, number of words with three or more syllables, etc. then it appears Steve Jobs had a much simpler talk. So Jobs’ popular presentation was so interesting, memorable, enjoyable, etc. because the language he used was relatively simple? Is there a correlation between simple, easy-to-understand language and impact on an audience? […]

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偉大で、伝説的な演説

King

少なくともとても分かりやすい例のひとつを思い出すことができる。書かれたテキストを分析する限りでは、Jobs や Gates(そして Dell)のプレゼンテーションよりも「難しい」が、大聴衆にとっては分かりやすい(国民を動かすほどになった)有名なスピーチだ。回りくどいいい方をしてしまったが、今日はマルチン・ルーサー・キング Jr. 博士の誕生日だと申し上げたかったのだ。アメリカの歴史上もっとも偉大な演説のひとつ、「私には夢がある・・・」(I Have a Dream.)を語ったひとの誕生日だ。キング博士の演説を書かれた文章だけでお読みになると、心を動かされるかもしれないし、そうでないかもしない。しかし、ビデオで演説のすべてを見て、それでも心から感動しないひとがいるものか私には分からない。ことばの持つ意味と、内容の重要さが大事だということは分かる。しかし、信念の力と、誠実な話し方と、そしてキング博士が聴衆との間に築いた驚くべき連帯感こそが、この演説を伝説的なものにしたのだ。

However, I can think of at least one popular speech that was easy to understand by a mass audience — it even moved a nation — but that is “more difficult” than the presentations by Jobs and Gates (and Dell) if one analyzed only the written transcripts. Obviously this is a long-winded way of me reminding you that today is the birthday of Dr. Martin Luther king, Jr., the man behind one of the greatest speeches in U.S. history, “I Have a Dream.” If you just read the transcript of Dr. King’s speech you may be moved or you may not, but I don’t know how anyone can watch the entire speech on video and not be absolutely blown away. It is indeed the meaning of the words and the importance of the content, but it is the power of the conviction and the sincerity of the delivery and the amazing connection Dr. King made with the people that makes this a legendary speech.

少し時間を割いて、是非つぎのビデオをご覧になるようお勧めしたい。1963 年のワシントン行進「I Have a Dream」のビデオだ。全部で17分の長さだが、もし全部を見れないというのなら、最後の3分だけでもご覧いただきたい。素晴らしい!

I hope you can take a few moments today and watch this video of the “I Have a Dream” (March on Washington) speech from 1963. The video is 17-minutes long. If you are short on time, please at least watch the last three minutes. Amazing.

I Hava A Dream-1

YouTube Video:”Martin Luther King ‘I have a dream’“:2006 年9月5日

<前 | ビデオクリップ | 

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この有名な演説のさわりの部分だけは知っていたが、全部を通して聴いたのは初めてだ。

真に偉大なスピーチ(プレゼンテーション)を可能にする答えがここにある。

分析的手法、とくに統計的分析は、時として大切なものを見落としかねない。

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マルチン・ルーサー・キング Jr. 博士の演説については、このほかにもすばらしい記事がある。

Long Tail World:”キング牧師「私には夢がある」:I Have a Dream Speech“:2月28日

この歴史的演説を巡る背景の解説と、演説の完全日本語訳だ。

プレゼンテーションに関心を持たれる方は、是非こちらも併せてご覧になるようお勧めする。

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2007年 1月 14日

Steve Jobs はなぜ説得力があるのか

jobs_iphone

マックワールドで Steve Jobs のプレゼンテーションを客席からじっと見ていたひとがいる。Carl Howe だ。

偉大なるコミュニケータ(communicator)としての Jobs のプレゼンテーションを、Carl Howe は次のように分析している。

SeekingAlpha:”Steve Jobs’ Reality Distortion Field: As Powerful As Ever” by Carl Howe:1月12日

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現実歪曲空間

今年のマックワールドに出席して得難い経験をしたことのひとつは、Steve Jobs 本人のプレゼンテーションスタイルをじかに見るチャンスが与えられたことだ。(ビデオストリーミングならアップルサイトで見れる。)キーノートの進行中、私は必死になって携帯電話でブログしていたが、彼のプレゼンテーションのやり方についても簡単なメモを残しておいた。例の「現実歪曲空間」(reality distortion field)と愛情を込めて呼ばれるものを彼がどうやって構築するのかということについてのメモだ。私の結論はこうだ。魔法なんてないのだ。偉大なコミュニケーターが為すべきことを全てやっているに過ぎない。みんなが教わるいろんなテクニックのことだ。Jobs に説得力があるのは、彼が次のことをやっているからだ。

One of the benefits of being at MacWorld this year was that it gave me the chance to dissect Steve Jobs’ presentation style in person (you can stream it yourself from Apple’s Web site). And while I was madly blogging on my cell phone while the keynote was going on, I did jot some notes about just how he sets up what is fondly referred to as his reality distortion field. My conclusion: there’s no magic here. He simply does all the things that a great communicator is supposed to, including many techniques that we teach. Jobs is so persuasive because he:

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練習

それは、Jobs が練習するからだ。それも何度も。Jobs はステージではとても落ち着いている。彼が完璧に内容を把握していることは、彼が話し始める前でも目をみれば分かる。彼は壇上で立ち往生したりしない。いつ興奮を呼び起こしたらよいか、いつ抑えたらよいか、彼は知っている。これはどれも難しいことではない。話す内容を頭に叩き込んでおけばの話だが。その内容を何度もなんども繰り返し練習することによって、初めて可能になるのだ。

• Rehearses — a lot. Jobs is extremely comfortable on stage. You can see in his eyes that he knows his content cold before he even starts. He isn’t trapped behind a podium. He knows when to get excited and when he needs to pull back. All of these things aren’t hard — provided you have the entire story you want to tell in your head. Jobs does — and that only happens if you have done the story over and over again in rehearsal.

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等身大の自分

それは、Jobs が等身大の自分でいるからだ。他人の真似をしたり、なにか自分と違うものになろうとしたりはしない。自分が話すことで興奮したり、感情的になることも厭(いと)わない。例えば、終わりの方でアップル従業員の家族に感謝を述べるところがあるが、彼が家族の示した献身に言及するとき声を詰まらせるのが聞いていて分かった筈だ。聴衆は彼のことばの背後に彼の感情を感じる。その感情が、何事であれ Jobs が語ることにインパクトを与えるのだ。

• Is himself. Jobs doesn’t try to imitate other people or be something he isn’t. He’s not afraid to get excited and emotional over what he is talking about. As an example, when he thanks the families of Apple employees at the end, you can hear him getting choked up about the commitment and dedication they had. The audience can feel the emotion behind his words, and that adds impact to anything Jobs says.

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効果的な視覚効果

それは、Jobs が効果的な視覚効果を使うからだ。Jobs はプレゼンテーションの映像をことばを多用することで混乱させたりはしない。彼が頭上のスライドで用いたことばは、これまで他のスライドで使ったものと似たようなものだ。スライドの文言は、「2.0B」(これまでの iTunes の販売曲数)とか「Ads」(コマーシャル)といったハッキリしたものだ。読むことに注意を向けなくても済むので、聴衆は Jobs のことばに耳を傾け、Jobs が語ることばがよりインパクトを持つ。Jobs の行なうデモも効果的だ。どれも短いデモで、ごちゃごちゃしていない。なぜシンプルにするのか。それはシンプルなアイデアほど伝わりやすく、聴衆に理解されやすいからだ。

• Uses visuals effectively. Jobs doesn’t clutter up his presentation visuals with a lot of words. In fact, the slide shown above probably had the most words of any slide he used. Most of his slides have such illuminating reading as 2.0B (the number of iTunes songs sold to date), or “Ads”. Without a lot of reading to do, the audience listens to Jobs more, giving the words he says more impact. Jobs also uses demos effectively; all of them use very simple examples rather than complicated ones. Why simplicity? Because simple ideas are easier to convey and easier for the audience to absorb.

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焦点を絞る

それは、Jobs が解決すべき問題に焦点を絞るからだ。iPhone を紹介する初めの7〜8分(26分から33分の間)を見て欲しい。その間ずっと Jobs はスマートフォンがどんなにバカでダサイか語り続ける。自分にどんな答えがあるのかは示さない。終わりの方になって、このマーケットで商品が成功するのに必要な特徴を三度聴衆に語る。驚いたことに彼が紹介する製品はまさにこの特徴を持っているのだ。これは効果的なマーケティング手法というに止まらない。ドラマと緊張を、さもなければ存在しなかったかもしれない場に造り出すのだ。

• Focuses on the problem he’s solving in detail. Watch Jobs’ first 7 or 8 minutes of the iPhone introduction (starting about 26 minutes in and running until 33 minutes). All of that time he spends setting up why smartphones are dumb and clunky. He doesn’t even talk about his solution to the problem until he’s told the audience no fewer than three times what criteria a successful product in this market must have. And amazingly, the product he introduces has exactly those criteria. It’s not only an effective marketing technique, but it creates drama and tension where there would be none otherwise.

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三度繰り返す

3in1

それは、Jobs が何事も三度繰り返すからだ。Jobs が新しいアイデアを紹介するときは、まずリストとして紹介する。ついでリストのそれぞれについて個別に語り、そのあとでまたリスト全体をまとめる。しかも、毎回必ず同じことばを使う。一番いい例が、iPhone の三つの機能、すなわち、iPod、電話、革新的インターネットコミュニケータ(Internet communicator)の三つだ。そのどれも、キーノートで語られるべき場があり、その都度繰り返されるアイコンがある。彼は三つのことばを聴衆に何度もなんども唱えさせることまでやってのける。その結果、集中して聞いていないひとにまでメッセージが伝わるのだ。

• Says everything three times. Jobs always introduces new ideas first as a list, then he talks about each member of the list individually, and then he summarizes the list later. And, he always uses exactly the same words each time. A great example is the three functions that the iPhone has: an iPod, a phone, and a revolutionary Internet communicator. Every aspect had its own section of the keynote, and its own icon that kept being repeated. He even got the audience to chant the three items sequentially with him over and over. The result: even listeners who aren’t paying attention get the message.

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当意即妙の話

それは、Jobs が当意即妙に話をするからだ。後半のプレゼンテーションで、スライド用リモコンが効かなくなった場面があった。予備のリモコンも動かない。そこで彼がやったことは何だったか。彼は Steve Wozniak との話をしたのだ。二人がテレビ撹乱器(TV jammer)を作り、学校に持っていって、そっとテレビ室で使って、テレビ画面を撹乱させたという話を。この話はプレゼンテーションとはなんの関係もない。しかし観客を笑わせ楽しませている間に、舞台裏ではクルーが問題を解決したのだ。この話は、iPhone 全体のストーリーの中では見事にかみ合ったという訳だ。

• Tells stories. At one point late in the presentation, Jobs’ slide advancing clicker failed. He switched to the backup, and it wasn’t working either. So what did he do? He told a story about how he and Steve Wozniak build a TV jammer and used it in college TV rooms to stealthily mess up TV signals. The story had nothing to do with the presentation, but it kept the audience laughing and amused while the backstage crew fixed the problem. Yet, the story fit beautifully into the larger iPhone story overall.

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沈黙の間合い

それは、Jobs が緊張をもたらす沈黙の間合い(dramatic pause)を恐れないからだ。Jobs が話題を変えようとしたり、なにか重要なことを話そうとするときは、決して急いだりはしない。そんなとき、彼はよく舞台の袖に行ってボトルから水を飲む。ステージの脇によって「すごいじゃないか?」といったことを口にし、そのまま待つ。この間合いが、聴衆が飽きるのを防ぎ、彼らに Jobs のいったことを反芻(はんすう)させるのだ。そして大切なことは、この間合いこそがその後に続くものに対する期待とドラマを造り出すのだ。

• Isn’t afraid of the dramatic pause. When Jobs switches topics or is about to say something important, he doesn’t rush into it. Often, he will go to the side of the stage and grab a drink of water. Or, he’ll just stand to the side of the stage and say something like, “Isn’t that amazing?” and just wait. The pauses both keep the audience from getting tired out and allows them to absorb what he has said. And more importantly, they create drama and anticipation for what is to come.

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特徴を比較する

それは、Jobs が特徴を示すのに比較の手法を用いるからだ。みんなに覚えてほしい特徴があるとき、彼は必ず他のなにかと比較する。iPhone を紹介したとき、彼はそれを他のスマートフォンと比較した。彼がかつて iPod nano を紹介したときは、他のフラッシュプレーヤと比較したものだ。比較することによって、その製品のセールスポイントを強調し、他の競争相手を自分の言葉で一蹴できるのだ。この Jobs のプレゼンテーションは、他に比べて抜きん出ている。

• Uses comparisons to demonstrate features. When Jobs has a feature he really wants people to remember, he always compares it to something else. In the iPhone introduction, he compared the iPhone with other smartphones. When he introduced the iPod nano, he compared it with other flash players. Comparisons allow him to emphasize the unique selling propositions of his products and paint the competitive landscape on his terms. This one feature of Jobs’ presentations puts his presentations head and shoulders above others.

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stan_sigman

プレゼンテーションでどんなに差がつくか、もっと確とした証拠がほしいというのなら、昨日 Jobs と一緒にプレゼンテーションをした Cingular の CEO Stan Sigman と比較してみるといい。その内容はプロに相応(ふさわ)しいものだったが、話し方たるやあまりに平板すぎて精彩がなかった。聴衆は途中で拍手をはじめ、短くするよう彼にシグナルを送り始めたほどだ。アウチ!

If anyone needs more convincing of how much of a difference presentation technique makes, just contrast Cingular CEO Stan Sigman’s presentation yesterday with Jobs’. Despite his professionally written content, his presentation just falls flat on too many words and not enough life. The audience started clapping at once point just to try to convince him to cut it short. Ouch.

アップルは顧客のために細部にこだわるという評判を勝ち得た。Jobs も聴衆のため同じことをする。同じことを他の会社が始めるまでは、アップルに比肩(ひけん)できる会社は殆どないだろう。それまでは、Jobs の現実歪曲空間はますます強固なものになるのだ。

Apple has built its reputation by sweating the details for its customers. Jobs does the same for his audiences. Few companies will effectively compete against Apple until they start doing the same. Until then, Jobs’ reality distortion field will be as powerful as ever.

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キーノートを見るひともさまざまだ。

Jobs のキーノートと同様、Carl Howe の文章も非常に説得力があるように思う。

Jobs のプレゼンテーションについては、以前 Garr Reynolds が Bill Gates と比較して書いたことがあったが、双方の記事に共通点が多いことに気付く。

見るひとは、ちゃんと見ている・・・

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「説得力」キーノートあとがき(1月27日)

phonespan

さすがに今ではアクセスもポツリポツリとなったが、合計するとどうやら1万を大きく超える方に来ていただいたようだ。

こんなマイナーなブログにそんなアクセスは初めてのこと。Carl Howe の記事はそれだけインパクトが大きかったということだろう。

ただ、これまでとはなにか違う感じがしている。

どんな方に、どんな読まれ方をしたのか今ひとつ分からないまま、アクセス数にとまどってしまって、頂いたコメントに返事が書けなくなってしまった。

返事の書けないコメント欄は、オープンエンドのままだ。

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あちこち巡っているうちに、このエントリーに対する感想らしきものが載っているサイトをいくつか見つけた。

はてなブックマーク

del.icio.us

livedoor クリップ

こうしてみると、Steve Jobs 本人(プレゼン上手、現実歪曲空間)と、仕事術としてのプレゼンテーション(ハウツー)という二つの関心を軸に、その二つがないまざったいろいろな観点から興味を持っていただいたように思える。

当ブログと関係のないところで、その反応を見れるというのも、ネット時代のおかげだろうか。

このエントリーをきっかけに、予期しない方からメールをいただいたりしてうれしかった。これも偏に Carl Howe のお蔭だ。

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2006年 11月 2日

心を打つプレゼン

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歴史的キーノートなど、Jobs のプレゼンテーションについて書いている Garr Reynolds 氏が、また素晴らしいプレゼンテーションを紹介している。

Presentation Zen:”Inspiring visual presentations” by Garr Reynolds:10月18日

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素晴らしい二つのビデオ

二つのビデオによるプレゼンテーションがある。二つとも強力な映像とテキストと音楽を使っている。ナレーションはない。最初は、力強く大きなイメージにテキストを添えるとどうなるかということを示す素晴らしい例だ。テキストはイメージの近くに添えられているのではなく、イメージの中にある。二つ目のプレゼンテーションは、非常にシンプルなことを伝えているが、私の好きな肯定的メッセージが添えられている。

Here are a couple of video presentations of a different sort. Both employ the use of strong visual elements, text, and audio; neither has narration. The first one is a great example of what can happen if you combine powerful, large images with text — text that is *in* the image not just near it. The second video presentation tells a very simple story with a positive message that I just love.

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Miniature Earth

bank

The Miniature Earth Project ::: since 2001

これに似たものを過去に見たことがあるかもしれない。この「小さな地球」(Miniature Earth)のオンラインスライドは、ハイクオリティ、フルスクリーンの映像がテキストと一体化したときどんなに効果的になるかということを示す素晴らしい例だ。ナレーションはついていないが、このスライドと一緒に誰かが話しかけているのを想像することができる。三か国語のプレゼンテーションへのリンクを付けたおいた。テキスト以外はどのスライドも同じだ。

You may have something similar to this in the past. This on-line slide presentation from Miniature Earth is a wonderful example which demonstrates the effectiveness of high-quality, full screen images combined with text. There is no narration with this, but you can imagine a speaker giving a talk with slides of this sort. Below are the links to the presentation (in three languages) and some sample slides. The slides are the same except for the language of the text.

John Lennon の音楽を付けた YouTube 版もあるが、これはまた違った感じがする。

There is a YouTube version with a John Lennon sound track for a different effect.

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無料のハグ(Free Hugs

YouTube Video:”Free Hugs Campaign. Inspiring Story! (music by sick puppies)“:9月22日

もうひとつのプレゼンテーションはとても違ったタイプだ。ビデオと、ほんの少しのテキストと、そして音楽が、見た目に、そして心に、シンプルで、忘れられない、心を打つ物語を語る。私はこのミュージックプレゼンテーションがとても好きだ。まったく加工しておらず、とてもシンプルで、とても効果的だ。ご覧になってください。

The next presentation is of a very different sort. This presentation uses video, a bit of text, and a song to visually and emotionally tell a simple, memorable, and inspirational story. I absolutely love this music video presentation. Very raw. Very simple. Very effective. Enjoy.

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「もし地球が100人のひとが住むムラだったら・・・」で始まるプレゼンテーション。

「Miniature Earth」も「Free Hugs」も、明快なメッセージが込められていることがその素晴らしさの秘密だ。

こんなプレゼンテーションの真似事でもできたらいいなあと思う。

Garr Reynolds 氏のいうとおり、ぜひご覧になってください。

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2006年 8月 26日

Back to the Future: 1997

future

以前プレゼンテーションについてすばらしい記事を書いた Garr Reynolds 氏が、また Steve Jobs について書いている。

Presentation Zen:”Steve Jobs and the summer keynote” by Garr Reynolds:8月11日

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ご承知のとおり、月曜日、サンフランシスコのモスコーニセンターで、Steve Jobs は 2006 年度の WWDC キーノートを行った。すでに沢山の記事が書かれているのでここでは繰り返さない。Steve の正統派のやり方については何度も何度も書いてきた。彼は最高だ。それなのに、沢山のひとがキーノートの内容についても、プレゼンテーションのやり方についても失望したというのは興味深いことだ。私としては奇妙に感じるが、驚くべきことではないのかもしれない。確かにこれまでに比べ、2006 年の WWDC のキーノートはいささか精彩を欠いたかもしれない。しかし、それは彼(ら)がいつもいまいましいほどうまいからだ。全体的にみて、やはり卓越した例だったといいたい。大勢のひとに向かって、如何に材料を発表し、短いデモを行うかというすばらしいお手本だ。他の会社のキーノートと比べてほしい。たいていひどいものだ。月曜日に Jobs とその仲間たちは立派にやってのけた。月曜日のキーノートについては、Macworld の Chris Breen が大変すばらしい記事を書いている。また、Les Posen のコメントも興味深い。

jobs_execs

As you know, Steve Jobs gave his WWDC ’06 keynote presentation Monday at the Moscone Center in San Francisco. Many people have written about it, so I won’t go in to any depth here as I have talked about Steve’s authentic approach many, many, many times before. He’s the best. Interestingly, many in the media were disappointed in the keynote, both the content and the delivery of the presentation. I find this odd, but I guess I should not be surprised. Sure, the WWDC ’06 keynote may have paled a bit when compared to other Jobs keynotes, but that’s just because they (and he) are always so friggin’ good. All ‘n all, I’d say it was still another great example of how to run short demos and present material to a very large room. Compared to the majority of corporate keynote addresses, which are dreadful, Jobs and his staff did a good job Monday. Here’s the most intelligent piece on Jobs’ keynote Monday by Macworld’s Chris Breen. (Also interesting comments by Les Posen).

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今年の夏のキーノートについて触れる代わりに、Steve Jobs のキーノートで、多分あなたが(お聞きになったことはあるかもしれないが)ご覧になったことがないものについてお話したい。・・・ 1997 年夏のことだ。窮地に立たされたアップルに Steve Jobs が戻ってきた。まだ、CEO ではなかった。Gil Amelio が身を引いた後、CEO や会長はまだ決まっていなかった。(その後誰がなったかはお分かりだろう。)ボストンで 1997 年に Macworld が行われたとき、アップルはまったく先行き不透明だった。当時のメディアは、アップルはもう終わったと思っていた。忠実なるマックファンですら、技術的なことが分かり、ブランドの何たるかが分かるひとは心配し始めていた。この Wired マガジンの表紙が一番よく物語っていると思う。そんな中で Steve Jobs は、35分の Macworld キーノートを行ったのだ。とくに魅力的な製品発表があった訳でもなかったが、これまで Macworld で Steve Jobs が行った一番いいスピーチのひとつだ。

jobs

Instead of talking about this summer’s keynote, I’d like to point you to a Steve Jobs Macworld keynote you probably have never seen, though you may have heard about it… In the summer of 1997, Steve Jobs was back in the saddle again at the “beleaguered” Apple, though not yet as CEO. In fact, no CEO or Chair had been named yet since Gil Amelio was asked to step down (guess who would eventually take these titles). At the time of Macworld Boston in 1997, Apple’s future was not at all certain. The press thought they were dead, and even Mac loyalist who knew the technology and what the brand meant were beginning to worry. Perhaps this Wired magazine cover sums it up best. In this context, then, Steve Jobs delivered a 35-minute Macworld keynote address. No sexy product launches, but one of the best talks by Steve Jobs at a Macworld ever.

このプレゼンテーションは、これからお話するように、いくつもの点で歴史的なものだった。私がとくに好きなのは、(私の左脳を満足させるほど)短く、論理的かつ理にかなったもので、それと同時に(私の感情を満足させるほど)希望と共感と、そして未来に対する明るい気持ちに満たされたものだったことだ。出来のいいビデオがいいタイミングでキーノートに挿入されて、彼のメッセージに力と真実味を与えた。プレゼンテーションを行うひとは、戦略的に十分に練られ、かつ内容的に関連のあるビデオをプレゼンテーションで使ってほしいと思う。

boston

… This presentation is historic, for more reasons than one, as you will see. But I like it most because it’s short, logical and reasonable (satisfying my left brain), and yet filled with hope, empathy, and optimism (satisfying my whole mind). The use of a well-made video in the middle of the keynote was well placed and added strength and credibility to his message. I wish other presenters would make better use of strategically placed relevant videos within their presentations.

Jobs は、司会の「満場のみなさん、Jobs 氏をご紹介するのはまことに光栄です」ということばに続いて、「おはよう」と短く切り出す。今見ても、私はそこが好きだ。なにか不都合があるといっているのではない。シンプルで控えめな Jobs の始め方が好きなのだ。Jobs は舞台に(たいてい満場の拍手を受けながら)足を進め、そして語り始める。他の有名な CEO の始め方がいかに禅の簡潔さにふさわしくないものか比べてほしい。

…. Today, I like the fact that Jobs starts his presentations with a simple “good morning,” rather than the usual “Ladies and gentlemen, please welcome….” over the PA and the “It’s an honor to be here…” from the presenter. I am not suggesting there is anything wrong with this, but I like the simple and humble beginnings of the Jobs keynote; he just walks on stage (often to thunderous applause) and gets started. Contrast this to the more unzen-like introductions of some other famous CEOs.

1997 年のキーノートの最後のところが私は一番好きなだ。ビデオの36分目の Jobs の結びのことばを聞いてほしい。彼がここで語ったことの真髄は、その後受賞に輝く「Think Different」キャンペーンで何度も何度も繰り返されることになる。(「Behind “Think Different”」は大変よく書けているので、ブランド戦略に興味のある方は是非読んでほしい。)Jobs の結びのことばの一部を次ぎに掲げる。

Mt favorite part of the 1997 keynote is at the end. Go to the 36:00 min mark to hear Jobs conclude his talk. The essence of what he says here will play out over the next year in the award-winning Think Different campaign. (Read Behind “Think Different” — excellent stuff for those interested in branding or marcom). Here’s an excerpt from Jobs’ closing comments:

think_different

今でもアップルコンピュータを買うには、みんなと違う考え方をする必要がある。アップルコンピュータを買うひとはみんなと違った考え方をする・・・ 彼らこそこの世におけるクリエイティブな精神なのだ。ただ仕事さえすればいいというのではない。彼らは世界を変えるのだ・・・ 多くの場合、みんなは彼らのことをクレージーだと考える。しかしそのクレージーさの中に、われわれは天才を見る。そして、そういうひとたちのためのツールをわれわれは作っているのだ。(1997 年 Macworld、Steve Jobs)

“…You still have to think differently to buy an Apple computer. The people who do buy them do think differently…they are the creative spirits of this world. They’re the people who are not just out to get a job done, they are out to change the world…A lot of times people think they’re crazy. But in that craziness, we see genius. And those are the people we’re making tools for.”

— Steve Jobs, Macworld 1997

もしこれが、あなたの耳には傲慢に聞こえ、あるいは古びた宣伝文句としか聞こえないというのなら、あなたはアップルとその忠実なユーザーについてよく理解していない。確かに Jobs は文章をよく練ったかもしれない。しかし彼は、文章をそのまま読んだり、暗記した文章を繰り返したりはしなかった。すくなくともそうは見えなかった。そして、そこが大事なのだ。彼は腹の底から、心の底から語っているようだった。アップルがどん底にあったとき、そのとき彼はボストンの舞台で語った。そして Jobs のスピーチは、忠実なユーザーたちがまさにそのとき必要としていたものを与えたのだ。厳しい現実の認識と、将来の計画と、そしてインスピレーションと信頼だ。忠実なユーザーがアップルの大義に身を委ねたことが無駄ではなかったと語りかけるものだ。その後九年経って、これほど立派にアップルが成し遂げるとは誰も想像し、予測することができなかった。Jobs と忠実なマックユーザーを別にすれば・・・ 彼らはそうなることを知っていたのだ。そうじゃないか。

If you think this sounds like hubris or just plain old marketing crappola, then you don’t really understand Apple and its loyal base. Perhaps Jobs planned these words out, but he was in no way reading them or repeating a memorized script, at least it did not appear that way (which is the point). It came across as coming straight from his gut, from his heart. He spoke on that stage in Boston at a time when Apple was at one of its lowest points. And yet Jobs’ presentation gave the loyal base exactly what they needed then: a hard dose of reality coupled with a plan, and an injection of inspiration and confidence that said the loyal users’ commitment to “the cause” was not in vain. Nine years later, I’d say Apple has done even better than anyone had dreamed or predicted, except, of course, for Jobs and the Mac faithful. They knew it all along (right?).

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Jobs の歴史的キーノートもすばらしいが、Garr Reynolds 氏の文章もすばらしいと思う。この文章自体がすばらしいプレゼンテーションだ。

Garr Reynolds 氏は、心底マックファンなのだろう。

1997 年の歴史的キーノートを、YouTube で是非ご覧いただきたい。

YouTube:”Macworld Boston 1997 – Full Version“:2006年3月6日

こんな歴史的資料までみつかる YouTube は、最早おもしろテレビの域を抜け出してきているようだ。

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参考:

・Presentation Zen:”Steve Jobs and the summer keynote” by Garr Reynolds:8月11日
・YouTube:”Macworld Boston 1997 – Full Version“:2006年3月6日

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2005年 11月 26日

プレゼン名人 Jobs vs. Gates

Steve Jobs と Bill Gates のプレゼンテーションを比較した記事がおもしろい。“Gates, Jobs, & the Zen aesthetic” by Garr Reynolds

片や名人の域に達したプレゼン名人、もう一方はプレゼンツール PowerPoint を生んだ会社の総帥だ。

プレゼンテーションの内容に注意を集中させるため、時には「カラのスライド」(empty slides)を効果的に使うことが重要だという指摘には頷(うなず)かされる。

Jobs と Gates の典型的な例を並べてみるとそれがよく分かる。

jobs_presen_01

大事な話をするとき、Jobs は自分に注意を集中させるために、背景のスライドは消してカラッポにする。

… Steve Jobs, allows the screen to fade completely empty at appropriate, short moments while he tells his story. … A blank screen from time to time also makes images stronger when they do appear.

… The thought of allowing the screen to become completely empty is scaring. Now all eyes are on you.

gates_presen_01

一方 Gates の場合、スライドが賑やかすぎて後ろに注意がいき、話の印象が散漫になってしまう。しかも、スライドの出来が悪いため尚更だ。

Gates here explaining the Live strategy. A lot of images and a lot of text. … Good graphic design guides the viewer and has a clear hierarchy or order so that she knows where to look first, second, and so on.

こんな感じで、具体的な例を挙げながら Jobs と Gates のプレゼンテーションを比較していくので、なかなか説得力がある。

スライドのデザインが重要なことを分からせるため、つぎのような例を挙げる。

jobs_presen_02

いわゆる bullet points の多用は、論点を分かりにくくし、ゴチャゴチャさせるだけだ。

gates_presen_02

禅の美意識の話や、「簡素」、「見え隠れ」、「八分で押さえる」といったことばが出てくるところはご愛嬌だが、アップルにいたことがあり、関西外大に勤務する、ユニークな経歴の持ち主のようだ。

また、「自然体」という観点から、Gates がよくやる胸の前で指を合わせるジェスチャは居心地の悪さを感じさせるのでよくないとか、ポケットに手を突っ込んで話すのはインフォーマルにすぎてアメリカですら通用しないなど、なかなか教えられる点が多い。

One unfortunate habit he [Mr. Gates] has is constantly bringing his finger tips together high across his chest while speaking. Often this leads to his hands being locked together somewhere across his chest. This gesture makes him seem uncomfortable and is a gesture reminiscent of The Simpsons’ Mr. Burns. By contrast, Steve Jobs has a more open style and at least seems comfortable and natural with his gestures.

Fundamental presentation rule: Do not stick your hands in your pockets. Informality is fine, but this is inappropriate even in the USA (and especially in cultures outside the U.S.).

良いプレゼンテーションに関心を持つひとにとって一読に値する記事だ。

参考:

“Gates, Jobs, & the Zen aesthetic” by Garr Reynolds
“Bill Gates and visual complexity” by Garr Reynolds
“The Zen of Jobs: presentation skills” by Scott McNulty (TUAW)

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2005年 8月 29日

Jobs の来日講演

iTunes Music Store Japan のオープニングイベント(8月4日)に来日した Jobs の講演が、マックファンの付録になったので、さっそく見てみた。

jobsinjapan

客席からビデオ録画したものらしく、会場のざわめきや咳なども録音されている。

開設したばかりの iTMS Japan をマックで操作してみせたのがハイライト。35 分余りのイベントだったが、例によってよどみなくスムーズだ。

同時通訳のせいか、観客の反応がワンテンポ遅れるような気がした。ややざわついた会場と相まって、Jobs もいささか勝手が違うように見えたのは気のせいか。

終り近くになって、机にのった原稿らしきものをめくる仕草をした。Jobs のスピーチで原稿らしいものを見たのは初めてだ。例の青いリモコンも見えた。

やっと日本講演の姿を見ることができて気持ちが落ち着いた。

念のために、米国と日本のアップルサイトをチェックしてみたが、やはり QuickTime はアップされていないようだった。

サンフランシスコの WWDC では、会場からのブログもあって時々刻々ネットに情報が流れ、アップルサイトにも間をおかずキーノートがアップされたものだが、日本ではだいぶテンポが遅い。

そういえば、Jobs が来日すること自体あまりニュースにならず、このイベントの後どうしたのかもあまり伝えられなかったように思う。Jobs がカリスマだといっても日米では温度差があるということか。

九月後半のパリ(アップル EXPO)ではどうだろうか。

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2005年 8月 23日

Jobs の卒業式スピーチ

Filed under: ひと,プレゼンテーション — shiro @ 21:34
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プレゼン名人 Jobs について書いたので、もうひとつ。

インテルマックへの移行を告げる Jobs のプレゼンテーション(6月の WWDC)はなかなか見応えがあったが、一週間ほどあとのスタンフォード大学での卒業式スピーチもこれまたたいしたものだった。

Jobs 自身のことばで、自分の出自や病気のことを赤裸々に述べている。ガンについては、余命三ヶ月〜六ヶ月と医者から宣告されたとも語っている。

自分のことばで語っているだけに胸に響くものが大きい。Jobs が大変な演説家であることを再認識させてくれることにもなった。

この素晴らしいスビーチについて誰か書いてくれないものかと思っていたら、「心に響くスピーチ」と題するブログがあった。

スピーチの原文、訳文、音声とも掲げてあるのがうれしい。多くのひとに読み、かつ、聞いて欲しいと思う。

なお、スピーチのテキストはこちらからも入手できる。

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