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2007年 3月 12日

アップルストアの秘密

Filed under: ひと,アップル — shiro @ 07:01
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アップルストアの秘密について Fortune がすばらしい記事を書いた。その記事についてこれまたすばらしい記事を Carl Howe が書いている。

Blackfriars’ MarketingThe secret to Apple stores: they sell benefits, not products” by Carl Howe:3月8日

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Fortune の記事

Fortune がすばらしい記事を載せている。「アップルがアメリカの小売りチェーン店でベストである理由。」このサイトでも触れたことのある数字を引用している。床面積1平方フィート当たりのアップルの売り上げが 4000 ドルだというのだ。これに比べると Tiffany & Co. 2600 ドル、Best Buy は僅か 930 ドルだ。しかし、私にとって Fortune の記事で一番印象に残ったのは、2000 年当時に Jobs が経験したつぎの話だった。

Fortune magazine has a great article on Why Apple is the best retailer in America. They cite a figure I’ve referenced before: the fact that Apple pulls in about $4,000 per square foot in its stores, compared with $2,600 for Tiffany & Co. and a measly $930 for Best Buy. But I thought the most telling part of the story was about an experience Jobs had when they were designing them back in 2000:

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Ron Johnson

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[Ron Johnson]

MickeyMickey DrexlerJobs Gap からスカウト]のアドバイスで一番よかったことは、デザインするだけでなく、実際に倉庫を借りて、模擬店舗を作り、それを20ぐらい作って、うまく行くかどうか試してみたらということだった」と Jobs は語る。言い換えれば、製品の場合と同じようにデザインしろということだ。アップルストアのバージョン 0.0 は、アップルキャンパスの近くの倉庫の中で生まれた。「RonRon JohnsonJobs Target から引き抜いた]と二人でストアのデザインをすべてやった。」そのとき、彼らにあることがひらめいたのだ。コンピュータは単なる仕事のツールから、ビデオや写真、音楽、情報などなどを扱う「ハブ」(hub)に変化してきている。だから売り上げも、マシンそのものより、マシンで出来ることからの方が大きくなっている。然るに彼らがデザインした店は、商品カテゴリー別のレイアウトになっていて、会社の内部組織の区別と同じだった。実際に買おうとする顧客が望む形ではない。「なんだ、これじゃ失敗じゃないか!」と Jobs はいった。[Fortune

“One of the best pieces of advice Mickey ever gave us was to go rent a warehouse and build a prototype of a store, and not, you know, just design it, go build 20 of them, then discover it didn’t work,” says Jobs. In other words, design it as you would a product. Apple Store Version 0.0 took shape in a warehouse near the Apple campus. “Ron and I had a store all designed,” says Jobs, when they were stopped by an insight: The computer was evolving from a simple productivity tool to a “hub” for video, photography, music, information, and so forth. The sale, then, was less about the machine than what you could do with it. But looking at their store, they winced. The hardware was laid out by product category – in other words, by how the company was organized internally, not by how a customer might actually want to buy things. “We were like, ‘Oh, God, we’re screwed!'” says Jobs.

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アップルストア第1号

しかし、彼らは失敗したわけではなかった。その店はモックアップだったから。「そこで我々はデザインし直した。ハッキリ覚えていないが、6か月ないし9か月ぐらい掛かっただろうか。しかしそれはどう考えても正しい決断だった。」最初のアップルストアがバージニア州 Tysons Corner でやっと開店に漕ぎ着けたとき、商品を展示したスペースはほんの一部で、あとは興味の対象別に並んでいた。右側には写真、ビデオ、子供向け、左側には問題対応、そして第三のものとして奥の方に Genius Bar だ。これは Johnson のアイデアによるものだ。[Fortune

But they weren’t screwed; they were in a mockup. “So we redesigned it,” he says. “And it cost us, I don’t know, six, nine months. But it was the right decision by a million miles.” When the first store finally opened, in Tysons Corner, Va., only a quarter of it was about product. The rest was arranged around interests: along the right wall, photos, videos, kids; on the left, problems. A third area – the Genius Bar in the back – was Johnson’s brainstorm.

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Genius Bar の誕生

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Ron Johnson は回想する。「アップルストアを立ち上げたとき、いろんな職業の経験をもったひとたちがやってきました。みんなの緊張をほぐすため、『これまでであなたたちが一番素晴らしいと思ったサービスは何だろうか』と尋ねました。答えは予期しないものでした。18人中16人がホテルでのサービスだと答えました。ホテルのコンシエルジュデスクは何かを売っているわけではありません。お客の世話をするためにあるのです。『それじゃ、たとえばフォーシーズンズホテルの親しみやすい雰囲気を備えた店は、どうやったら作れるだろうか?』その答えが、『じゃあ、私たちの店にもバーを作ろう。ただし、アルコールではなく、アドバイスを提供しよう』ということでした。」[Fortune

“When we launched retail, I got this group together, people from a variety of walks of life,” says Johnson. “As an icebreaker, we said, ‘Tell us about the best service experience you’ve ever had.'” Of the 18 people, 16 said it was in a hotel. This was unexpected. But of course: The concierge desk at a hotel isn’t selling anything; it’s there to help. “We said, ‘Well, how do we create a store that has the friendliness of a Four Seasons Hotel?'” The answer: “Let’s put a bar in our stores. But instead of dispensing alcohol, we dispense advice.”

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成功の秘密

2000 年という年は、デルが PC の王様だった。PC を売る秘訣は低価格だ。だから Johnson の考えは完全な異端だった。しかし、それこそがアップルストアの成功の秘密だった。アップルの製品を売るのではなく、アップルから得られるメリットと体験を売れ、と。

In 2000 when Dell was king of PCs and low prices were the mantra of PC retailing, this insight was complete heresy. But it also held the key to Apple’s retail success: sell Apple benefits and experiences, not Apple products.

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Staples の場合

このことに気付いた小売業者は他にもいる。Davis Freeberg SeekingAlpha.com で文房具店 Staples のテレビマーケッティングのやり方を褒めている。何故か。それは競争相手の Office Depot と違って、30秒の CM スポットを買う代わりに、自分たちの商品を「The Office」のようなテレビ番組に登場させて一体化する方にカネをかけ始めたからだ。テレビ番組と一体化する方が、視聴者お気に入り番組をコマーシャルで中断するより彼らの利益に叶うと判断したからだ。要すれば、コマーシャルのあとに笑顔が残るか、それともしかめっ面が残るかということだ。

There are some other retailers that have figured this out. Davis Freeberg writes over at SeekingAlpha.com that he’s particularly pleased with Staples’ approach to marketing on TV. Why? Because unlike competitor Office Depot, Staples is now spending more of its marketing money on product placement in TV shows like The Office instead of buying 30-second commercial spots. Staples realized that integrating their products with a TV show produced more customer benefit than interrupting their favorite TV show with a commercial. In short, it left them smiling rather than frowning at the marketing experience.

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メリットを売るか、製品を売るか

ここですべての事業者やマーケッティング会社に二つの質問をしたい。

So here are two questions for all business owners and marketers out there:

・あなた方が売っているものは製品(product)か、それともそのメリット(benefit)か?

Are you selling benefits or products?

・あなた方は顧客に満足できる経験を与えているだろうか。おカネさえあればよろこんであなた方の製品を買いたいと思わせるようないい経験を。それとも、あなた方の製品はもう買いたくないと思わせるような経験だろうか。

Are you delivering an experience that makes customers happy to spend as much money as they can afford with you, or one that leaves them wanting to spend the least they can?

この質問には慎重に答えて欲しい。この質問への答が、アメリカのベストの小売店チェーンになるか、それともワーストになるのかの分かれ目だから。

Answer the questions carefully; the answers to these questions are the difference between the best and the worst of US retailers.

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単にアップル製品を売るのではなく、そのメリットと体験を売ること、それが成功の秘密というわけだ。

「アップルが望むのは製品を売ることだけでなく、それから始まる美しく(かつ利益にもなる)友情関係なのだ」ということばも、そういう考えを背景にして初めて出てくる。[Fortune の記事

Apple wants the purchase to be the beginning, not the conclusion, of a beautiful – and, it hopes, profitable – friendship.

アップルのマーケティング戦略にとって、不可分の一体となっているのがアップルストアなのだ。

元になっている Fortune の記事もすばらしいので、ぜひこちらもご一読ください。

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参考:

Blackfriars’ MarketingThe secret to Apple stores: they sell benefits, not products” by Carl Howe:3月8日
SeekingAlphaThe Key to Apple’s Retail Success” by Carl Howe:3月9日
CNN [Fortune]Why Apple is the best retailer in America” by Jerry Useem:3月8日
Ars TechnicaFortune basks in Apple’s retail glow” by Grover Saunders:3月9日

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3件のコメント

  1. アップルストアの秘密・・・他。

     こん○○は!!ホイヤーです。本日の更新は 「MacBookでトラックパッドを使いこなす」と「アップルストアの秘密」他をご案内いたします。○アンクル・ホイヤーの独り言・・。 今日は 忙しくて 更新が おそくなりましたよーん・・。○マックな話題・・いろいろ・・。A……

    コメント by Macとえいちやin楽天広場 — 2007年 3月 12日 @ 21:30

  2.  むかしは 技術畑の現場第一線で 技術を老練なベテランから引き継ぎ また 自分のなかで消化して 後輩たちに 継承してきました・・。あるとき 突然に 姿も見えない・・通信関係の営業に 社名で 飛び込みまして また いろんな提案系の営業をしてきましたけど・・。なにをうるのか 製品をうるより 使う事の喜び もっていることで えるなにかの満足感とかから もっともっとすすんださきのところで 営業・・が いまは 叫ばれているのですが そういうのを頭ではなくて 目で見て からだで わかりやすくしてくれている気がしますね・・。こせこせした 小手先のなにかではなくて これぐらいしないと つかめないのかもしれませんね・・。本当は このあたりは 商売上手??な 日本人が うーんと 得意な分野だと 思うのですが・・。いつのまにか 頭でっかちの ばかばっかり日本人になってしまったのでしょうか・・。もっと 柔軟な思考をもっていた諸先輩が おいでるのにね・・。なぜなんでしょうねー・・。

     いつのまにか 会社(学校なんかも そうかも)が おおきく組織が なるにつれ なんか 縦社会というか そんな得体の知れないものに あやつられて 現場の声を吸収するとい 一番大切で 基本的な事が おおきく欠落しているのでしょうかねー・・。
     
     もっと こころが わかる そういうひとたちが そだってほしいですねー・・。

    コメント by アンクル・ホイヤー — 2007年 3月 17日 @ 14:45

  3. > アンクル・ホイヤー さん
    このてのものは 日本のお家芸だったのではないかという点は まったく同感です
    われわれが誇ってきたものが いつの間にか失われていくようで いささか寂しいですね

    コメント by shiro — 2007年 3月 18日 @ 09:08


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